

こめかみっ!
著者:稲葉洋樹
イラスト:瀬口たかひろ
企画:『こめかみっ!』製作委員会
■登場キャラクター
▼米倉亮介▼※セリフ青
17歳の男子高校生。とある事情で七米町のシェアハウス「米神荘」で暮らすことになる。同い年で「米神荘」管理人のひかりとは過去につながりが……?
▼越野ひかり▼※セリフ赤
17歳の女子高校生。なんでもソツなくこなす真面目で優等生な越野家の四女。器用でしっかりものスーパー仕切り人だが押しには弱くなし崩し的に「米神荘」の管理を任されている。
■お題原稿あらすじ
米倉亮介は17才の高校生。父親との確執から九州の七米町に転校し、 シェアハウス・米神荘に住むことになった。そこで出会ったのは、アイドル顔負けの美少女「越野ひかり」をはじめとする7人姉妹。彼女たちは、それぞれとっても個性的な上に、なんだか不思議な能力まで持っていた!?
お題は越野姉妹とのドタバタ初顔合わせを済ませた翌朝の朝食シーン、ひかりが作ったおにぎりを亮介がほおばると…。
■以下、お題原稿
「ッ……!なんだ、これは!?」
俺はくわっと両目を見開き、初めて炎を目にした猿人類のごとく声を震わせた。
「ふっくらとしていて、それでいて柔らかすぎず、噛みしめるたびに口の中に広がるほのかな甘み……それらを引き立たせる絶妙の塩加減に、決して崩れず、かつ一粒一粒の食感が感じられるほどよい握り方……これがジャパニーズONIGIRIだというのか……!?」
「りょ、亮介君!?なんだか色々とおかしいよ!?口調とかテンションとか!」
おにぎり片手にワナワナと戦慄していると、ひかりが激しくツッコミを入れてきた。
俺はハッと我に返り、頭を横に振って気持ちを落ち着かせる。
「すまん……つい……。だがこんな美味いおにぎりを食ったのは生まれて初めてだ。一体、どんなお米を使っているんだ?ブランド名は?」
「お、お米はこの町で収穫したものだよ。ブランド名とかはないと思うけど……」
「そうか……まさか、これほどの逸品がまだ福岡に眠っていたとは……。大量生産できれば日本の米市場に革命をもたらすかもしれない。ひかり、知り合いに農家はいるか?」
「いるけど……ちょっと落ち着いて亮介君。多分、大量生産は無理だよ。その……この町のお米は、ちょっと特別だから……」
「なるほど。部外者には簡単には教えられない、極秘の製法というわけか……」
「いえ、あの……って、もう、もうそれでいいや……」
「お米もそうだが、味付けや握り具合も完璧だな。ひかりが作ったのか?」
「そうだけど……」
「そうか、さすがだな……。今日から経緯を込めて『おにぎりマスターひかり』と呼んでも?」
「いやだよそんなの!」
「なら『マスター・オブ・ライスボール』で……」
「英語にしてもいや!」
ひかりは珍しく強い口調で拒否してくる。
おにぎりマスターひかり……なかなかいい響きだと思ったのだが……。
「もう……そんなことより早く食べて学校に行こう?」
「あ、ああ……」
少々ご機嫌ナナメな様子でおにぎりを食べ始めるひかりを横目に、俺も食事を再開する。
ひかりの料理はおにぎりだけでなく、味噌汁や焼き魚も絶品だった。